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拡張ルールのできるまで [-制作ノート]


 
 
人気作に中には、拡張セットを個別で販売するケースもありますが、
今回の『猟奇耽異-キュリオシティ・ハンティング-』は再版の特典として企画したものです。

前回お話ししたような追加要素と同時進行で進めていましたが、
一番反応が良かったため、採用することにしました。

どのような経緯で完成したのか、残してある資料を見ながらまとめてみました。





いただいていた3つの課題

2014年11月に初版を発売した『幻影探偵団』ですが、
実際にプレイした方々から、検討したいご意見をいくつかいただいていました。

ざっくりと課題点をまとめてます。


【特殊能力】
・それぞれの探偵団に特殊能力が欲しい
・影男以外の容疑者に個性がないのがもったいない

【宝石チップの片寄り】
・宝石チップがひとりのプレイヤーに集中しやすい
・宝石チップがまったく取れない

【さらなる推理要素】
・最後に二択になった時、ちょっとでも考える要素が欲しい
・数独、潜水艦ゲームっぽいので、ロジック以外の推理要素が欲しい




以前に作っていた推理ゲームが要素を盛り込み過ぎて失敗したので、
『幻影探偵団』では、できるだけシンプルにしていました。
プレイした感想として、要素を増やしたいという声が上がってきたのは嬉しい誤算でした。

でも、あまり大掛かりなものにならないように制約を設けました。

・推理の難易度は下げない
・基本ルールを大きく変更しない
・追加の印刷物をなるべく作らない

個人的に拡張ルール、上級ルールといったものに、
どれくらい需要があるのか計りかねる部分があり、
手間をかけた割に遊んでもらえないということも十分考えられたからです。





仕様の検討

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それぞれの探偵団に【特殊能力】を採用しても、それほど変化はつけられないと思い、
いっそ容疑者全員に個別の能力をつけられないかと検討しています。

【特殊能力】の効果で、課題となっていた【宝石チップの片寄り】や、【さらなる推理要素】も
一挙に解決してやろうというジャストアイデアからのスタートです。

効果については、アクションカードで採用しなかったものや、
これまでにメモしてあったシステムのボツ案などを拾うだけで、かなりの量になりました。


始めてみるとアイデアとしては悪くないのですが、難点が次々と出てきます。

・容疑者カードに【特殊能力】の効果をレイアウトするとごちゃつく
・【特殊能力】を発揮するためには、正体をばらすことになり、推理の難易度が下がる



IMG_8457.jpg

一度、A7サイズの小型のサマリーに情報をまとめ、
【特殊能力】を発揮する条件を、『団長になる』『殺害される』『生き残る』に限定、
なるべく推理の妨げにならないよう調整してみました。


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情報を小型のサマリーにまとめるというアイデアは、
別件で検討していたゲームのアイデアだったのだが、いい具合でハマってくれました。
サイズを大きくしてポストカードサイズにするべきか、
文字の読みやすさを含め検討しています。

ただ、サマリーにまとめてみて分かったのですが、
【特殊能力】の発揮条件が少なく、
まったく活かせないままゲーム終了になるケースが起こりえるのです。



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そこで、団長と団員それぞれ別の【特種能力】を用意し、
探偵団の構成をプレイヤーが決めるというルールを追加。

このルールは残念ながら影男には適応しませんが、
【特殊能力】の種類も増え、【宝石チップの片寄り】に対応した効果も盛り込むことができました。

【さらなる推理要素】という課題をクリアするために、【特殊能力】の効果に強弱をつけています。
強力な特殊能力を持つ容疑者は、正体がバレやすくなっており、
プレイヤーの行動から推理できるように調整していました。



テストプレイでの調整

IMG_8483.jpg

画像は初期の仕様で、ようやくテストプレイに持ち込んだ頃のもの。
テストプレイは好評でしたが、まだまだ課題は残っていました。

・もっと【特殊能力】の強弱を抑えた方がいい
・上級ルールだが、初プレイの場合でもおすすめできる
・ポストカードサイズじゃないと文字が読めない
・テキスト内容が分かりづらい

【特殊能力】の強弱はあえて残していたのですが、
繰り返しプレイした場合、やることが決まってしまうという意見をいただきました。
ここから大修正になるのですが、正解でしたね。
ひとりで作っていると、どうしても視野が狭くなりがちです。
テストプレイの重要性を再確認しました。

サマリーもポストカードサイズに確定し、ブログでβ版を公開しながら、
しばらくの間、テキストの分かりにくい部分などを含め、調整を繰り返しています。

『幻影探偵団』の初期からテストプレイをお願いしている方々のチェックをクリアして
納得できる仕上がりになったのは、かなりギリギリの進行になりました。



デザインの注意点

こうしてテストプレイを繰り返し、
ようやく完成した拡張ルール『猟奇耽異-キュリオシティ・ハンティング-』ですが、
デザインについても、いくつか書いておきます。


IMG_8546.jpg

『幻影探偵団』はコンポーネントを含め、世界観が評価されている作品です。
特典物として企画したものとはいえ、チープな仕様になってしまわないよう注意しています。

大変好評だったのは、角マルですね!!

お願いしている印刷所では追加料金がかかってしまいますが、
ポストカードで5mmの角マルが対応可能です。
当然、納期も遅れますが、耐久性や見た目が格段に良くなります。

紙も厚めのものを選んでいるので、すぐにヘタれるようなことはありません。

こういったことは、どうしても予算との兼合いになりますが、
細部まで気を使ってみるのもいいでしょう。



IMG_1852.jpg

小型のサマリーにまとめるために、デザイン面でも気を使った部分があります。

・文字の必読性
書体、文字のサイズ、字間(文字と文字の空間)、行間(行と行の空間)、
文字組(ハコ組や揃えかた)、文字の色(スミ文字なのか白抜き文字なのか)、
テクスチャーの有無、1行に収める文面の長さ、などなど。
かぎられたスペースに、読みやすくレイアウトできるように注意したいです。

・テキストのわかりやすさ
こちらは複数の方に見てもらいながら、なるべく短い文面で、
かつ不明確にならないよう注意しました。
日本語の難しさ・・・というか自分の文章力のなさを痛感します。

・使いやすさ
表面に拡張ルールの説明、裏面にそれぞれの特殊能力一覧をレイアウトしています。
それぞれきちんとまとめることで、インストしやすく、プレイ中も確認しやすくなっています。
特殊能力一覧では、容疑者のイニシャルを文面の下にテクスチャーとしてレイアウトしました。
メリハリのあるレイアウトで使いやすさを意識しています。

・フレーバーをもりこむ
容疑者の能力は、美少年なら[機略]、宝石商なら[蒐集]というように、
それぞれのキャラクターに合うような名称をつけ、
またその能力もイメージに合うようものを選んでいます。
プレイヤーが感情移入する重要な要素なので、きちんともりこみたいですね!!



 
 
 
思ったよりも長くなりました^^。

今回の拡張ルールで、『幻影探偵団』の気になっていた部分を補完できたと思っています。

特種能力の確認など、どうしてもインストが長くなってしまいますが、
作者として自信を持っておすすめできるものができました。

再版するにあたって、思い残すことはありません。

 
 

『幻影探偵団』は作り物が多く、再版のハードルが高いのですが、
制作者とユーザーが互いに笑顔になれよう、やれることをやってみました。

何かの参考になれば幸いです。




 
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再版での追加要素 [-制作ノート]

2015年3月の再版では、分かりにくい文言や、マニュアルの誤字などを修正を加え、
『幻影探偵団』を遊びやすく改良しましたが、
11月の再々版では、追加要素を加えられないか検討しています。

次々と新作ゲームが発表される中、
再版されるゲームに新鮮味を加え、すでに持っているユーザーにも、
新規に購入するユーザにも興味を持ってもらうにはどうすればいいか。

やれたもの、やれなかったもの、いろいろありますが、今後の制作の参考になればなによりです。






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・プレイ人数の変更
『幻影探偵団』では13枚の容疑者カードを使いますが、
枚数を増やすことで難易度を上げたり、プレイ人数を増やせないかと検討しています。
このアイデアは遊んだ方からも何度か提案されていました。

容疑者カードを17枚、21枚、26枚にすれば、
プレイ人数によって多少の調整が必要ですが対応可能です。

アクションカードの『頭文字』や、推理シートは変更が必要ですが、
新しい効果のアクションカードや、改訂した新ルールのアイデアもあったので、
試してみたい追加要素でした。

最終的に採用しなかった理由としては、どうしてもプレイ時間が長くなることと、
プレイヤーの実力差が出やすくなることが上げられます。





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・コンポーネントの追加
再々版では、印刷所の仕様変更により、円形チップの封入枚数が変更になりました。
そのまま白チップにすることもできたのですが、価格的にもそれほど変わらないので、
追加要素として『殺害チップ』なるものを追加することになりました。
推理を視覚的に整理できることから、遊んだ方からは好評をいただいていますが、
当初の計画にはなかった要素になります。


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初版の際に配布した『髑髏王カード』が好評だったため、
再版以降の特典として封入するようになりました。

さらにダウンロードアイテムとして『髑髏王ボード』も作っています。
プレイアビリティーも上がるので、印刷してみたかったのですが、
それほど需要がないだろうと判断して、今回は見送りとなりました。

当初、髑髏王の姿はあまりかたちを描かずに、プレイヤーのイメージに委ねる予定でしたが、
twitterなどで名前がひとり歩きしたこともあり、何点か描くことになりました。
作者の分身とも言えるキャラですが、ちょっとやり過ぎたかな?と思うこともありますね^^。







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・コラボ
制作者同士がお互いの作品の要素を共有するコラボレーション企画が
盛んに行われるようになりました。
『犯人は探偵の中にイる』でおなじみのEJIN研究所様から、
『幻影探偵団』をオマージュした『骸骨王VSボドゲ探偵』という
拡張パックがリリースされていますが、
エジンさんの新作が『ヌシも悪よのう』という
江戸時代の悪徳商人をモチーフにした作品だったので、
さすがに要素を盛り込むのは難しいと判断して断念しています。


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後日、仕上がったパッケージを見て、
この絵柄の『幻影探偵団』も見てみたいなと思ったのは、ここだけの話です^^





PDF1-16.jpg
 
・英語化
『幻影探偵団』もボードゲームギーク(以下BGG)に登録してから、
海外の方に興味を持っていただく機会がありました。
個人的にどれほど需要があるのか分からないので、そのまま放置していました。
ありがたいことにチャレンジしてみたいというお話しをいただき、
マニュアルを英語化することになりました。

日本語を英訳する場合、どうしても原稿量が増え、元のレイアウトに収まらず、
微調整を繰り返すことになります。
『幻影探偵団』はルールだけではなく、設定やエンディングストーリーなど、
かなりの文字量になるため、予想以上に時間がかかりました。

今回お願いすることになった『ひつじごや』さんからは、
今後もマニュアル等の英語化をやってみたいということですので、
興味のある方はご連絡いただければ紹介いたします。






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・てづくりキット&豪華パーツ
前回でも紹介した要素ですね。
購入者が簡単な工作をすることで完成するキットになります。
市販品でも、木製コマにシールを貼るものなんかもありますよね。
デザインフェスタやワンフェスといった市場もあるので、
こういう要素は伸びて欲しいと思います。





CHjkt.jpg

・拡張ルール
11月の再々版で採用したのが拡張ルールです。
上記したコンポーネントの追加と合わせてセットにするべきだったか悩むところですね。
とはいえ、作り物が増えるとコストもかさむので、
最終的には、最小限の仕様で、最大限の変化を狙った仕様にまとめました。

前作『傾国-KEIKOKU-』では、まったく違うルールを提案しましたが、
今回は遊び慣れた方々がプレイするための上級ルールになっています。

拡張ルール『猟奇耽異-キュリオシティ・ハンティング-』については、
長くなりそうなので、次回取り上げてみたいと思います。




それでは、お時間があれば『拡張ルールのできるまで』におつき合いください。



ではでは。
 
 
 
 
 
 

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手作りと量産 [-制作ノート]

ボードゲーム制作にかぎらず、ものづくりをする上で、
制作費の問題はつきものですね。

凝ったものを作ろうと思うと、どうしても制作費が上がり、
販売価格が高くなってしまいます。

『幻影探偵団』でも、販売価格との折り合いをつけるのに苦労しました。

しかし、ゲームマーケットでは、そういった制限を解除して、
手作り制作で素晴らしいコンポーネントを仕上げる方々がいらっしゃいます。

エルタイルズ、スチームウォーズ、チューリップバブル、マトリンゴなどなど、
こだわりの仕上がりに感動しつつ、その苦労を考えると、
あきらかに人の道を踏み越えた“阿修羅道”ゆえ、
けして脚を踏み入れてはならないと、堅く心に誓っていました^^。


でも、量産せずに、作り方を公開すれば、
興味を持ったユーザーさんが自主的に工作してくれるんじゃ????


なんていう、あま〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜い期待を持って始めたのが、
『幻影探偵団 豪華版パーツ』の数々でした。


幻影探偵団のカスタマイズ

カスタマイズパーツのダウンロード



IMG_0114-683fa.JPG

コンセプトとして、

・ガンプラレベルの工作で仕上がること
・100均や東急ハンズなどで入手しやすい部材を使う
・特殊な工具を使わない

というように、あくまで“お手軽工作”での提案で進めることにしてみました。




実際にやってみると、これが予想以上に難しい!
時計のジャンクパーツや、各種専門パーツを取り寄せ、
1点ものと割り切れば、もっと楽に作れるはずなのだが、
コンセプトどおりの仕様で、納得できるものを提案するのにだいぶ時間がかかりました。

仕上がったものは好評でしたが、
それでも、メッキを剥がすために重曹で煮たり、
接着剤を使用して貼り込むことに、ハードルが高いと感じる方もいたので、
“お手軽工作”という企画は難しいですね。




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11月のゲームマーケット2015秋に向け、再々版を決めた時に、
『髑髏王ボード』を印刷して販売することや、
おまけとして『ふろく工作キット』を特典として封入することを検討しましたが、
それほど需要がないだろうと判断してボツにしています。

最終的には、書き溜めていたアイデアを元に、
拡張ルールを特典として用意することになりましたが、
実際に作っていたらどうなっていたのか気になるところです。




・・・が、ここで話が終わらない・・・




いよいよゲームマーケットが近づいてくると、
いろいろな手作り制作のコンポーネントの画像がtwitterで公開されるんです!!

うわぁ!スゲェ!!凝ってるな!!カッケェェ〜〜〜〜!!!!!!!
し、手裏剣削ってる!手描きかよ!!
レーザー?バァ〜〜〜〜〜ニングだと!?ネコかわいいッ!!!!

それらの画像を見ていると、ついつい自分でもやりたくなってしまいます・・・orz



結局は、無茶なスケジュールでの深夜作業の連続です。


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気がつけば、勢い余って『招待状』に血糊を描いたり、化粧箱用の帯まで作っていました。

“お手軽工作”として提案したものですが、量産するにはやはり大変で、
気がつけばがっつり“阿修羅道”に踏み込んでいましたね・・・orz

結局、5部制作するのが限界でしたが、うかつに踏み込むと地獄を見ることを、
身を以て体験したゲームマーケットになりました。

やはり、手作り制作の場合は、よっぽど計画的にやらないとキツイですねぇ。



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そういえば、ゲームマーケット用に『髑髏王のおめん』も作ってましたね。
すっかり忘れていましたw

こんなこと無計画でやってたら、そりゃ大変ですよwwww



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それでも、ゲームマーケット当日、『豪華版パーツセット』が完売し、
試遊卓でも遊んでもらえたのは嬉しいことです。

再版の問い合わせを何回かいただいていますが、今のところ予定していません。

もし機会があれば部材を集め、工作していただけると、作者としては嬉しいかぎりです。
 
 
 
 
さて、次回は『再版での追加要素』について書いてみたいと思います。


ではでは。 
 
 
 
 
 
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再版までにやれること [-制作ノート]

いざ再版をすることになっても、まず気になるのがどれくらい需要があるのかということ。
これはゲームマーケット2015秋に行った再々版でもおなじです。

再版してみたら全然売れなかった・・・という悪夢は避けたいですよね。

そこで再版までにやってみたこと、検討したことをまとめてみました。





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・ゲーム会、試遊会でプレイしてもらう
『幻影探偵団』はゲームマーケットのアンケートでは、
評価が大きく分かれる作品となりました。
実際にプレイした方から、感想を聞くことで再版の需要があるか、
改善する点がないか意見をいただいています。

また、試遊会などのイベントに参加し、
再版までのあいだ、話題を繋げることも重要だと思います。
ボドゲの新作は常にリリースされているので、
埋もれないようにしたいところです。




・twitter、ブログのレビューを検討する
『幻影探偵団』をプレイした方からレビューをいただけることがあります。
当然、いい評価ばかりではないですが、
ゲームシステムのバグや、分かりにくい点など、改良の余地がある場合もあるので、
できるかぎり拾えるようにしたいですね。
もちろん好評価も再版するためのモチベーションになるので大事にしたいです^^




CARD_RGB.jpg

・プレゼントキャンペーン
昨年のクリスマスに、クレーム対応用に保管していたものを、
プレゼントするという企画を行いました。
twitterで呼びかけた突発的なものでしたが、
多くの方に参加してもらい、興味をもっていただけました。
在庫に余裕があればイベントとして試してみたいですね。




・修正点を検討する
マニュアルなどに誤字脱字がある場合は修正したいですね。
遊んだ方から分かりにくい点などの指摘があった場合も、可能なかぎり調整したいところです。
『幻影探偵団』でも、基本ルールはそのままに、そういった点を調整して再版しました。

デザインを大きくいじる場合は、『第2版』『新版』などの目印を
パッケージにレイアウトする必要が出てくるので注意したいですね。




IMG_7293.jpg

・販路の検討
『幻影探偵団』は再版をした場合、委託をお願いすることが前提になっていました。

ゲームマーケット2015春の開催日が、結婚記念日と重なっており、
出展が絶望的な状態・・・(ここは笑うところ

同じ時期に仕事場の引っ越しが重なったこともあり、
テストプレイでもお世話になっていたイエローサブマリン様に、
一括で委託をお願いすることになりました。

さらに折よく、ペンとサイコロのろいさんから、
ゲームマーケット大坂での委託や通販のお話しをいただいたり、
EJIN研究所のエジンさんから、
ゲームマーケット2015春での委託をお願いすることができました。

最近では、キックスターターや、自分自身で通販をするケースもあるようですが、
自分自身が対応できないと判断し、検討しませんでした。

事前に販路を確保できるなら、検討しておくべきでしょう。





・印刷所を検討する
制作をお願いした印刷所で引き続き再版するべきか。
納期や割引、クオリティの問題で変更する場合もありそうですね。
発注する個数によっては、単価が変わる場合もあります。

また、お願いするつもりでも、料金設定が変更になっていたり、
印刷の仕様が変更になっていることもあるので、
スケジュールとともに確認する必要があります。

当然のことながら、ギリギリの発注はトラブルの元になるので要注意!





・その他の企画
このほかにも、他のゲームとのコラボや、拡張ルール、マニュアルの英語化など、
11月の再々版までにやってみたことがありますが、
長くなりそうなので、それはまた別の機会に!!





次回は『手作りと量産』について書いてみたいと思います。


ではでは。
 
 
 
 
 


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再版と家庭内稟議 [-制作ノート]

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早いもので、ゲムマから10日過ぎてしまいました。
終わってしまうと、ホントあっという間ですね^^。

少しずつですが『幻影探偵団』の制作ノートを公開していきます。

どういう切り口で進めようかと悩んでいたのですが、
今年のはじめまで遡り、『再版』を軸に、何ができるのか、何をやったのかということを、
順番に書いていこうかと思います。



まず出だしとして、何を書きましょう。。。。。

あぁ、そうだ!!!!

ボードゲームの再版はハードルが高く、

なかなか踏ん切りがつかないものですが、

家庭を持つ制作者なら、まず必ず越えねばならない壁があります・・・





そうです、家 庭 内 稟 議 です!!







PONCHI2.jpg

制作者の中には、家族ぐるみで制作したり、
応援していただける方もいらっしゃるとは思いますが、
残念ながらうちの奥様はボードゲームがあまり好きではなく、
制作活動も協力的とは言えません。
とはいえ、ナイショで再版したり、新作を作ろうものなら大変なことになります。

『幻影探偵団』の初版は好評で、ゲームマーケットで完売した後も、
再版の声を多数いただいていましたが、それにはまず家庭内稟議を通過せねばなりません。

そこでいくつかのことを行いました。




・ボードゲーム制作の収支
いくつ作って、いくつ売れて、経費としてどれくらいかかったのか、
交通費や飲食代、試作品制作雑費などなど含め、きちんと説明しました。
当然、制作者ならこういったことは把握しなければならないのですが、
根が無精なもので、年末まで貯めこんだ領収書を整理し、帳簿を確認してもらっています。


・いただいたレビューの紹介
『幻影探偵団』を遊んでもらった感想などを見てもらい、
いっしょに喜んでもらおうとしたのですが、残念ながらこれは失敗。
もともと興味がないので、完全に猫に小判でしたね^^
まぁ、評判が悪くないということだけは、理解してもらえたようですが(たぶん


・家事手伝い&子供の世話
ボドゲ制作に入ると、普段の仕事が忙しいこともあり、休日を使ってしまうことが多く、
家族と過ごす時間が削られてしまいます。
その埋め合わせではないですが、ゲムマのあとはなるべく時間を作るように心がけました。

あと、うちの奥様から体重を減らせという厳命をいただきました・・・orz
ボドゲ制作していると、運動を怠り、こもりがちになりますよね。
体重量が劇的に増えたわけではないのですが、筋肉が落ちて脂肪が増えるという、
悪循環に陥っていたので、しばらくジョギングすることになりました。


・再版した際の展望を語る
どれくらい需要があり、いくつ再版するのかをきちんとした数字をだして説明しています。
ゲムマだけではなく、店舗委託を含め、どのように進めるのかも、
うちの奥様は把握していないので、再版が無謀な賭けではないことを納得してもらいます。



いきなり稟議を通そうとするのではなく、それなりに時間をかけた雰囲気づくりが重要ですね。
(うちの奥様曰く、相手をするのが面倒になった・・・そうですがw)


もうこのへんはうろ覚えですが、2015年の1月には再版を決定しています。


出だしからグダグダな気がしないでもないですが、
次回は、再版するまでに行った活動について書いていこうと思います。

参考になるか微妙ですが、しばらくおつき合いください。
 
 
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ゲームの世界観を広げてみる [-制作ノート]



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制作の初期に世界観を広げるため、
『幻影探偵団』を映画や小説にしたらどうなるか、検討したことがあります。

ゲームのなかのやりとりが、そのまま映像化できればいいのですが、
やってみるとなかなか難しいものですね。
アナログゲームをモチーフにした作品として、
映画『人狼ゲーム』『クルード』、小説『六花の勇者』などがありますが、
どの作品もそれぞれ工夫を凝らしていますね。



アイデア帳に残っているメモを見ると、
現在の仕様と違う部分もあったので微調整しましたが、
歯車館に到着してから、真相解明までの流れをまとめてみました。









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歯車館への招待

怪人〈髑髏王〉からの招待状を受け取った、それぞれの探偵団のメンバーたち。
自動車、人力車といった乗り物や徒歩で、歯車館にひとりずつに到着。

玄関ホールに入った面々は、小テーブルに置かれた、注意書きを目にする。

《この館のそれぞれの部屋に用意してある小箱を受け取り、合図とともに上階・展示室に集まりたまえ》

不審に思いながらも、集まった面々は指示どおり、ひとりずつ部屋に入る。
歯車館の部屋には、からくり道具のコレクションが展示されており、
からくりの歯車を起動することで、小箱を入手する。

小箱には黒表紙の名簿、イニシャルが書かれたメモ、拳銃などが入っていた・・・。






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展示室に集合

小箱を調べていると、歯車館の中央部にある時計塔の鐘が鳴る。

その合図に合わせ、館に集まったメンバーは、展示室に向かった。

展示室には、館の見取り図が置かれ、
壁を覆うように多数のオートマタ(自動人形)のコレクションが並べられていた。


全員が展示室に集まったのを見計らったように、
1台の少女のかたちをしたオートマタが動きだし、
〈髑髏王〉からのメッセージを書き始める。

《互いに尋問を繰り返し、限られた時間内に、私(髑髏王)を見つけ出すのだ・・・》

メッセージから、館に集まった面々が、
4つの幻影探偵団のメンバーと、〈髑髏王〉であることを知らされる。

メッセージが書き上がるのと同時に、展示室の正面にある時計塔の格子窓が開く。
その向こうには、囚われた令嬢に向かって、冷酷なノコギリが少しずつ近づくの見えた・・・

混乱のする一同。

オートマタがさらなるメッセージを書き上げる。

《自分から正体を明かせば、全員殺される》

《一定時間が経過するごとに、諸君にヒントと宝石を授けよう》

《時計塔の鐘が12時を告げる時、令嬢は血塗られた芸術品になるだろう》






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〈髑髏王〉を見つけ出せ!!

館のようすを調べる者。

参加者を誘惑し、情報を引き出そうとする者。

酒を酌み交わしながら、会話をする者。

展示室に残り、オートマタのメッセージを待つ者。

ひとり個室に篭る者。

小箱の中身からヒントを探す者。

幻影探偵団のメンバーたちは、それぞれ〈髑髏王〉を割り出そうとする。

いくつかの情報から、正体がバレた〈記者〉!
その瞬間、部屋に仕掛けられた毒矢が〈記者〉襲う!!

正体がバレることは、死を意味すると悟る。
沈黙する一同をよそに、再びオートマタが動き出す。

《「朧」のメンバーは上階に2人、下階に1人・・・》





IMG_7113.JPG


〈影男〉現る!!

〈記者〉の死は、他の歯車館にいる者に知らされる。
だが、死んだはずの〈記者〉は、客室〈人馬の間〉で生きていた!?

混乱するなか、居合わせたひとりが、変装の達人〈影男〉の噂を思い出す。

次々と姿を変え、参加者を翻弄する影男。
自分の目的が髑髏王を裏で操る〈あのお方〉を倒すことだと告げ、姿を眩ます。





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さらなる惨劇

機関室から地下道を通り、時計塔に潜り込もうとした〈柔術家〉。

宝石を奪い、館から逃げ出そうとした〈宝石商〉。

さらなる犠牲者が、惨たらしい死を迎えた・・・。

制限時間が迫る中、残った幻影探偵団のメンバーたちは、
もう一度展示室に集結し、髑髏王の正体を見極めようとするが、
オートマタが最後のメッセージを書き上げようとした刹那、
歯車館に銃声が響く!!



「真相解明!すべての謎が解けたよ・・・」

不敵な表情で、ある者が事件の終決を宣言する!!






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ゲーム中では、アクションカードとして表現していたものを小道具などに置き換えたり、
ゲームボードにレイアウトされていた無数の西洋人形を、オートマタとして物語に登場させたりしています。
全体として90分程度のスリラー映画をイメージしましたが、
それぞれの探偵団の背景や、エンディングまで含めると、とても収まりきれませんね。

とはいえ、こうした物語を作ることで、
ゲームの流れを確認でき、イメージを膨らますことができました。
世界観を大事にした作品を作る場合、試してみる価値はありそうです。

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システム作りとストーリー [-制作ノート]

久々に制作ノートを書いてみましたが、続けるうちに、
これまでのことが自分の中でも整理されてきますね^^。



自分自身の制作スタイル・・・というほど、
たくさんのゲームを作ったわけではありませんが、
システム作りと平行して、かならずストーリーを組み上げています。

前作『傾国-KEIKOKU-』は、ボツ企画を春秋戦国時代の世界観に置き換えたゲームでしたが、
それぞれのキャラカードの設定や、プレイヤーとなる策士のストーリーも用意していました。

ゲーム自体に反映されないものもありますが、そういったストーリーを作ることで、
新しいアイデアが生まれたり、モチベーションが上がることも多いのです。

今回の新作『幻影探偵団』も、ゲームのシステム作りと、ストーリーの構築を、
キャッチボールするように繰り返し、できあがったゲームです。


どのような過程を経て、『幻影探偵団』が生まれたのか、
当時のメモを見てみましょう。





■本格か変格か

ミステリ作品には、おきまりのシチュエーションがいくつかありますが、
それを繰り返し遊ぶボードゲームに落とし込むにはどうしたらいいだろう。
『誰も予想しなかった空前絶後のトリック』も、
一度遊んでネタバレしたら、それで終わりですから^^。


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いわゆる『本格』と呼ばれる推理小説に使われる題材から、
当初は凝りすぎず、遊ぶたびに変化できるギミックについて検討することから初めています。

・時計塔と時間経過を盛り込む

・明かされる複雑な人間関係

・ダイイングメッセージ、遺留品による見立て

・迷路のように入り組んだ、仕掛けのある屋敷・館

その一方で、『変格』と呼ばれる、
推理よりも、猟奇幻想趣味などを優先させた作品の世界観も取り入れられたら・・・

などと、“言うは易し”なメモが残っていますね(苦笑)






■『アイオーンの時計屋敷』のストーリー

作りはじめた推理ゲーム『アイオーンの時計屋敷』には、
検討したギミックが盛り込まれていました。

さらに、明治から平成(現在)まで、
ゲームを繰り返すことで時代が移り変わり、
舞台となる屋敷が変化するアイデアまで、妄想(笑)が膨らんでいました。



IMG_6880.jpg

残念ながら作者の技量不足で、きちんと組み立てることはできませんでしたが、
同時期に書かれたストーリーも、のちの『幻影探偵団』に大きな影響を与えています。


[明治編]時計塔の怪人
貿易で巨万の冨を築いた豪商が、日英博覧会で知り合った錬金術士を連れて帰国。
豪商は錬金術士の設計した時計屋敷の仕掛けを使って、
美女の生き血から不老長寿の秘薬を作ろうとするが、落成式の夜に何者かに刺殺される!
屋敷に集まったものたちは、秘薬を狙う『教団』『結社』のメンバーたち。
真犯人は!?そして時計台に縛られた美女の運命は!?


[大正編]惨劇ふたたび
時計屋敷の惨劇から10数年。
屋敷を買い取った、占い師の老婆は、養女として引き取った娘を使い、
不老不死の秘薬を作ろうとするが、何者かに撲殺される。
繰り返される惨劇!世代を超え、ふたたび結集した『教団』『結社』のメンバーたち。
真犯人を割り出し、屋敷に隠された錬金術士の遺産を探し出すことができるのか?


『アイオーンの時計屋敷』では、こういったショートストーリーが、各時代ごとに作られていました。


『アイオーンの時計屋敷』が頓挫し、システムを一新した『幻影探偵団』ですが、
ストーリーや世界観はそのまま流用するかたちで再構成することになります。






■横溝か乱歩か

複雑に作り過ぎて、ゲームとして成り立たなかった『アイオーンの時計屋敷』は、
『複雑な人間関係』『遺留品による見立て』など、
横溝正史の推理小説から着想を得た部分が多かったように思います。


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当時のゲームボードはセピアで、どこか陰鬱な印象があるのは、その名残りかもしれません。

『自分の力量で、出来る範囲の推理ゲームに作り直す』

ゲームとしての規模を縮小して、再構成する際に、
もう少し痛快に推理を楽しめる世界観を加えることを検討しますが、
真っ先に浮かんだのが、江戸川乱歩です。

乱歩作品は本格推理小説が好きな方からは敬遠されがちですが、
大衆向けの長編は独特の世界観があります。
『アイオーンの時計屋敷』のストーリー再構成する際に、
乱歩作品が持つ軽快感や、当時の時代背景を取り入れることにしました。

ストーリーと設定を再構成することで、新しいアイデアが次々と出てきます!
『教団』『結社』といった組織から、探偵団への設定変更、
そして、敵となる怪人・髑髏王が生まれたのものこの時期です。


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コンポーネントのデザインは華やかに、毒々しい色調に変化していきます。
全体の色調は、乱歩作品が発表された時代よりずっとあとの
70年代〜80年代に公開された映画やTVドラマを意識しています。
蝶や薔薇、西洋人形、時計塔と分数計を繋ぐ歯車などは、
乱歩作品の書籍の装丁からイメージを膨らませています。

実は『幻影探偵団』のコンポーネントには、
乱歩作品の小道具としてよく登場する、仏像の画像がこっそり仕込まれています。
どこに隠れているでしょう?機会があれば探してみてください^^




■髑髏王と影男

ストーリー設定からの影響として、『髑髏王』の存在が大きかったです。

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猟奇殺人犯である髑髏王が、どういう思想を持つ人物で、なぜ犯行に及ぶのか、
愉快犯としての一面、そういった設定を組み立てるうちに、
招待状、分数計のギミック、アクションカードや宝石チップのアイデアなどが出てきました。
また、ゲームとしては、システムの一部である髑髏王の存在感を出すために、
団員を殺害するアイデアも、『傾国宮の殺人』から流用することで解決しています。


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反対に難産だったのが『影男』ですね。
『傾国宮の殺人』の『共犯者』から流用したアイデアでしたが、
ルールとしての仕組みが出来上がっているのに、名称・設定がしっくりこないのです。
テストプレイ当初は『迷わせる探偵』という意味から『迷探偵』としていましたが、
ストーリーにもしっくり馴染みませんでした。

乱歩の著書に同じ名前の作品があるでの、なるべくなら別の名称にしたかったのですが、
『影人』『灰色の男』など、べつのアイデアも検討した結果、
最終的に『影男』に落ち着きました。

『影男』の存在は、ゲームの難易度に大きく関係しています。
テストプレイ当初、難しすぎる、もっと能力を限定するべき、といった意見もいただいています。
自分の団員にしか変装できない、毎回変装する相手を変える、「いいえ」しか言えないなど、
いくつか能力を限定する案も検討しましたが、あまり面白味を感じられず、
現在とおなじ仕様に戻しています。





■ゲームにストーリーは必要か

テストプレイ当初、ストーリーや設定は公開しませんでした。
各探偵団のロゴも、あくまでアイコンとして機能するだけのものです。

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ところが、シートフォルダーをデザインする際に、
裏面に遊びとして設定を盛り込んだところ、意外なほど好評だったのです。

・ゲームの世界観が広がる

・番号当てをしているのではなく、ちゃんと推理しているように感じられる

・TRPGをやっているみたいで面白い

・純粋にゲームを楽しみたい人は読まなければいいだけなので、ありだと思う

推理ゲームというジャンルに限定すれば、
こういった設定の肉付けはとても重要なようです。
自分自身も推理ゲームを遊ぶなら、こういった設定は大歓迎ですから!!
(とはいえ、自分が作った設定を公開するのは、少々気恥ずかしくもありますが^^)


ありがたいことに、twitterやブログに書かれている感想を見ても、
ストーリー設定を軸に作り込んだコンポーネントは好評なようです。

『幻影探偵団』のマニュアルには、マルチエンディングが用意されています。
試作した『アイオーンの時計屋敷』のストーリとも一部リンクした内容になっています。
ゲームをする上では必要ない情報ですが、お持ちの方は読んでみてください^^。






『傾国-KEIKOKU-』のときに、書きたいことを、
かなりがっつり書いてしまったので、
今回の制作ノートは苦労しています(笑)

書きたいことはあるのですが、どこまで書けることやら^^
 
 
つづく?
 

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テストプレイとデザインの変化 [-制作ノート]

今回はテストプレイをした日々と、
コンポーネントのデザイン変化をご紹介。


仮タイトルを『幻影探偵団』とした2014年3月頃から、
ボードゲームの制作者が集まって、それぞれの試作を遊ぶ、
テストプレイ会に再度持ち込んでいます。


『アイオーンの時計屋敷』がイマイチだったこともあり、
大きく修正したものがイメージどおりの動きで遊ばれるのか不安でした。

というのも、これまでは2人用ゲームをメインに制作してきたこともあり、
多人数用のゲームを試作するのが、初めてだったからです。




■テストプレイ会に持ち込む

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ボードがあるので立派に見えますが、
コンポーネントのデザインはまだ揃っておらず、
カード類はトランプを流用し、
黒地に文字だけ書かれた使用していました。

この段階では、新しく配置した分数計が機能するのか、
要素を絞った内容が、推理ゲームとして成立するのか、
といった、初期動作の確認がメインになります。

遊んでもらった方から、
「まだまだ調整が必要だが、面白かった」という感想があり、
継続して『幻影探偵団』の制作を進めることにしました。




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推理シートも現在のものとはだいぶ違っています。

「数独みたいで楽しかった!」という意見をもらい、
枠をなるべくつけないデザインで進めていた、
推理シートの方向性を大きく変えることのなりました。

推理シートの使用を敬遠する方がいるいっぽうで、
楽しいと感じてくれる方を確認できたのは大きな成果でした。


制作者同士のテストプレイ会は、お互いの試作品を遊び合うので、
気兼ねなく意見を言い合えるのでおすすめです。
また、ゲーム制作のコツや知識なども共有できるのもいいですね。

twitterなどで、そういった企画の呼びかけが増えているので、
気になる方はチェックしてみるといいと思います。





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2013年4月頃のコンポーネントです。
カードやチップに絵柄が入っていますが、まだ仮のものですね。
アクションカードの構成や効果も現在のものとは、だいぶ違っています。

ボードも細部を修正しカラフルになりました。
右側の見取り図は台形になり、2階建ての構造が立体的に見えるよう変更されています。


オープンゲーム会など、大勢が集まる場所では、
声を出し、繰り返し質問をするゲームは、
どうしても聞き間違えや、書き間違えといったミスが発生します。

この頃、少しずつゲームとしてのバランスが整えられていく中、
それをいかに減らせるかが課題になっていました。






■オープンゲーム会に持ち込む

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2013年5月頃、ようやくオープンゲーム会に持ち込めるようになりました。

一番多く使われる『尋問』のミスを減らすために、専用の『尋問カード』が加わっています。

すでに裏面は『髑髏王からの招待状』になっていますが、
アイデアとしては招待状の方が早く、フレーバー要素になるが、
どうにかコンポーネントに加えられないかと検討していました。


この頃の尋問カードは視認性が悪く、上下の区別がつきにくいため、
何度かミスが発生しましたが、アイデアとしては十分活用できるものでした。

カード類のデザインも少しずつ変更され、現在のものに近くなりました。

アクションカードの構成も変更され、枚数の違いはありますが、
ほぼ現在のものと同じになっています。




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2013年6月頃、蒲田のオープンゲーム会『ミスボド』でのテストプレイの様子です。

こちらのゲーム会の特色として、ミステリ系のゲームがよく遊ばれることもあり、
テストプレイをお願いするには、かなりハードルが高かったのですが、
調整を繰り返してきたこともあり好評でした。

ただ、それでもバランスを含め、いくつもの修正案をいただくことになりました。

・推理と駆け引きのバランスについて(この頃は6:4ぐらい、理想は7:3)

・分数計と宝石チップの偏り

・シートフォルダーが黒紙で地味

・不要なアクションカード、強すぎるアクションカードの調整

・わかりにくい用語を変更する



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原価を抑えるために出来れば黒紙のままで進めたかったのですが、
それぞれの探偵団ごとにデザインの違うシートフォルダーを試作しています。

裏面には、それまでマークだけの存在だった、各探偵団の設定や、
ストーリーに関連する用語などをレイアウトしてみました。

これが予想外に好評で、ゲームの世界観を説明する際や、
ゲームをセットアップするまでの場つなぎになりました。

また各探偵団の名称を大きく記入していることで、
初対面のプレイヤー同士遊ぶときや、
色の区別がつきにくい方にも遊びやすくなりました。



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2013年7月頃には、タイトルを『幻影探偵団』に正式決定!!
ミスボドでのテストプレイを中心に、バランス調整を繰り返しています。
推理と駆け引きのバランスを、7:3に近づけるのが目標でした。

少し前から、分数計をバランスよく動かすために、
アクションカード『歯車』を使うことになりましたが、
その枚数や、効果についての調整に時間を割いています。


ゲームマーケットまで、まだ余裕があると思われそうですが、
8月以降、仕事が忙しくなることが決まっていたので、そろそろ仕様を確定しなければなりません。


推理ゲームの上級プレイヤーの方々にテストプレイしていただく機会が増え、
1ポイントの設定変更、1枚のカード追加といった少しずつのバランス調整で、
推理ゲームとしての精度が一気に上がった時期です。



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当時、『影男』は『迷探偵』と呼ばれてましたが、
名称も、ビジュアルも不評のため、変更することになりました。
な、なんと、のっぺらぼう!! 今見ると、たしかにイマイチですねぇ^^




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2013年9月頃になると、現在のルールに確定しています。

中央のボードの下に、公開されたアクションカードが3枚と山札があります。
これもテストプレイしていただいた方の意見を参考に、
アクションカードから行動を推理するという要素を加えた結果です。

『推理型対戦ゲヱム』や、『真相解明』といった名称も、
テストプレイをする中で提案してもらい、検討したものです。
見落とされがちですが、これすごく大事です!!


この時期になると、「えッ!まだテストプレイしてるのか!?」と驚かれることもありましたが、
発売する前に、やれることはやってみる覚悟でした^^


9月には、先行分をデザイン入稿しているのですが、
試作はまだまだ続きます。




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テストプレイの現場で、シートフォルダーの裏側が無地なのが寂しい、
アクションカードの構成を見れるようにしたい要望があり、
さらなる改良を施すことになります。

……この頃になると、原価どうなのよ????
ということを考えなくなっていた気がします(苦笑)

入稿先で、尋問カードの紙を倍額の高級紙に変更したり、
ゲームマーケット当日用のおまけまで制作していますからねぇ......(制作は計画的に!






■テストプレイをお願いする時のコンポーネント


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気がつけば、かなりの量のボツデザインです(これはほんの一部

ゲーム会に参加する時間が取れず、
仕事の合間にデザイン修正を繰り返した結果ですが、
「テストプレイのコンポーネントじゃない」と、驚かれることもありました(笑)

とはいえ、テストプレイをお願いする際は、
実際のコンポーネントに近づけたものでお願いする方がいいでしょう。

プレイアビリティを確認することはもちろん、
イラストを含め、コンポーネントのデザインは
ゲームを遊ぶモチベーションに大きく影響します。


オープンゲーム会でのテストプレイでは、
友人はもちろん、まったく面識のない方にもお願いしていますが、
ビジュアルがしっかりしたものを用意すると、
出てくる感想も違ったものになると感じました。

自分自身ができる範囲でかまわないので、
テストプレイヤーに楽しんでもらえるものを用意したいところです。

『傾国-KEIKOKU-』の制作ノートでは、
テストプレイをお願いするときの注意点について書いたものもあります。
これからゲームを作ってみたいと思う方は、一度読んでみてください^^。


テストプレイの日々






思ったよりも文面が長くなり、ダレてきましたが、
次回は『システム作りとストーリー』について、書いてみたいと思います。
 
お時間のある方は、おつき合いください^^
 
 
 
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失敗に終わった『アイオーンの時計屋敷』 [-制作ノート]

 
今回は制作再開した推理ゲーム『アイオーンの時計屋敷』が、
『幻影探偵団』に変わるまでを書こうと思います。



どのような推理ゲームにしたいのか

ゲーム会に参加するようになって、
『スルース』『ブラックウィーン(ブラック・ヴィエナ)』『クルード』『P.I』
『カテリーナの陰謀』『カサブランカ』『スコットランドヤード』『ドメモ』など、
正体隠匿、推理ゲームとして有名な作品をいくつか遊ばせてもらいました。

遊んでみると、難しいゲームほどストイックさを要求され、
“推理”することが出来ず、“作業”で終わることもしばしば。
逆に推理ゲームと思ってプレイしてみると、推理要素が少なかったり、
ヤマカンで当てていくだけのゲームも多く、物足りないと感じることもありました。

推理ゲームといってもジャンルの幅が広く、
自分の作るゲームをどれくらいの難易度に設定するか悩むところです。



2013年の冬に制作再開した『アイオーンの時計屋敷』は、
『スルース』や『ブラックウィーン(ブラック・ヴィエナ)』などの、
筆記用具を使用する本格的な推理ゲームの入門編を目指しました。

筆記用具を使うのは、どうしても手間がかかるため、
敬遠されることもあるでしょうが、プレイ後の充実感は変えがたいものがあります。
ただ、なるべくハードルを下げて、
初心者にも遊びやすい工夫を加えようとアイデアを練りました。



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2013年の年末まで、手帳にイメージラフを繰り返し描きながら、試行錯誤を続けています。


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当初は、大時計の針に縛り付けられた美女が、
時間経過で身体がねじ切れるギミックを検討していました。


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時計屋敷の間取り図はプレイしやすいように、複雑にしない方向で検討しています。
当時は屋敷の中心に、中庭がありました。


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A4のレイアウトにどれくらいの要素を盛り込めるか、ざっくりとチェックもしています。



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ネコに見守られながら、布団の上でデザイン検討も^^



手帳に残っているラフ画やメモを見ると、
最初期のアイデアとして、
やりたいことがいくつか書かれています。


・美女と大時計をビジュアル&ギミックに盛り込む

・時間の経過によって変化するゲーム展開

・繰り返すだけの単調な推理合戦にしない

・論理だけではなく、ときにはひらめき(直感)が必要になる

・推理以外の駆け引き要素を加える(推理と駆け引きの比率 5:5)


『幻影探偵団』まで引き継がれている要素が多いですね。






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テストプレイ用の『アイオーンの時計屋敷』です。
2014年の1月には、ゲームとして遊べるものに仕上がっています。

『幻影探偵団』のコンポーネントに似ていますが、
ゲームのシステムはまったく違うものでした。

・ダイスを使い、分数計がない

・40〜60分のゲームを3回繰り返して遊ぶ(明治〜平成へと時代が変わる)

・舞台となる時計屋敷が増改築される(中庭のある平屋建て)

・経過によって変わるストーリー要素

・真相カード(もうひとつの推理要素)

この時点でも、かなりの要素を盛り込んでいますね。
当時のコンポーネント一式も保存してあるので、
久々に遊んでみたくなりました(笑)







初陣は惨敗!

ところが、この『アイオーンの時計屋敷』。
まだ調整を始めたばかりとはいえ、テストプレイでの評価はイマイチでした。


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2014年1〜2月頃、ボドゲ制作者や友人などにテストプレイをしてもらっています。

感想としては、

・考える要素が多すぎて推理にならない

・長い(苦笑)

・ゲームボードはかっこいい

・・・などなど、残念な結果でした。





やはり自分の力量以上のものを詰め込み過ぎたのが敗因ですね。

ここからルールを含め、大改修していきます。
膨らみ過ぎた要素を削り、
推理ゲームとしてシンプルなルールを目標に再調整していきました。


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2014年3月にはコンポーネントだけでなく、
ルールを大きく変えた『幻影探偵団』の原型が誕生しています。

ここでの変更点としては、

・プレイ時間を60分程度にする(長考しない場合)

・ダイスを使わず、捜査によって時間が進むギミックを盛り込む(のちの分数計)

・時間経過で容疑者が死ぬ

・推理以外の逆転要素を盛り込む(のちの宝石チップ)

・屋敷を2階建てにする

・他の容疑者に化けるキャラを入れる(のちの影男)


『アイオーンの時計屋敷』のコンポーネントを使いながらも、
まったく違うゲームを作るつもりで、試せることをやってみました。
『傾国宮の殺人』で採用したアイデアも再活用しています。

まだまだ修正を繰り返すことになりますが、
『幻影探偵団』のゲーム要素のほとんどは、この段階で組み込まれました。





これからしばらく『幻影探偵団』をテストプレイする日々が続きます。

次回はオープンゲーム会や、制作者同士のテストプレイ会での出来事を中心に進めていきます。


つづく
  

タグ:制作ノート
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『幻影探偵団』の制作に入るまで [-制作ノート]

これから数回に分けて、『幻影探偵団』の制作ノートを書いていきたいと思います。

完成までに時間がかかったので、どういう切り口で書こうかと悩みましたが、
無理せず思いつくままに書いてみることにしました^^

いろいろ読みにくい部分もあるとは思いますが、しばしおつき合いくださいませ。



今回は、前作『傾国-KEIKOKU-』を発売してから、
『幻影探偵団』の制作に入るまでの出来事をざっくりとまとめてみました。







ゲーム会で遊ぶ日々

『傾国-KEIKOKU-』のテストプレイをしてもらうため、
オープンゲーム会に参加するようになってから、
古典と呼ばれるような名作から、リリースされたばかりの新作まで、
それまで遊んだこともない、たくさんのボードゲームに触れる機会ができました。


なかでも印象に残っているのが『ディヴィナーレ』。

ゲームのルールには、直接関係のないバックグラウンドと、
作り込まれたコンポーネントが見事なボードゲームです。
『幻影探偵団』を作るうえで、最も影響を受けたゲームです。

2012年夏頃〜2013秋までに吸収した要素が、
その後の制作に大きく影響してきます。
やはり作るだけではなく、遊ぶことも重要ですね^^


『傾国-KEIKOKU-』初版の出展後から、
次回作は、しっかりとした世界観を持たせた推理ゲームを作ろうと、
アイデア出しを続けていましたが、気がつけば、
かなり大掛かりな仕掛けが必要なゲームになっていました。

当時はまだ、重ゲーと呼ばれるような長時間ゲームのプレイ経験もなく、
作ったものといえば、2人用の短時間ゲームをひとつだけ・・・。
結局、作り上げるスキルが足りず、
新しいゲームとして、まとめあげることができませんでした。


IMG_4703.JPG

2013年春。
『傾国-KEIKOKU-』第2版の追加ルール『傾国宮の殺人』として、
アイデアを部分的に採用したものの、長期間放置することになります。

『傾国宮の殺人』ルール








別の試作を進める日々

アイデア出しをしていた推理ゲームは、ルールも複雑ですが、
なによりコンポーネントのボリュームが負担になっていました。

デザイン制作の時間はもちろん、特殊加工を含む印刷代などの経費を考えると、
仕事の合間に趣味としてやるには無理がありました。

もう少しコンパクトなゲームを作ってみよう!

2013年の春頃から、頭を切り替え、伝統ゲームをモチーフにした、
子供と遊べるかわいいゲーム制作に挑戦しています。


IMG_5674.JPG

こちらは仮デザインですが、コンポーネントを作り、
テストプレイをしばらく繰り返したおかげで、十分楽しめるレベルのゲームになりました。
一般ウケを狙ったゲームで、短時間で遊べることもあり、悪くない仕上がりになっていたと思います。

・・・が、ひとつ致命的な欠点がありました・・・


絵 柄 が か わ い く な い (真顔


自分で描いて言うのもなんですが、かわいいものを描く才能はゼロですね(笑)。
はじめてテストプレイ用のイラストを見せたときの息子のビミョ〜な顔は生涯忘れませんッ!!

その後、制作しているうちに、自分自身のモチベーションが下がってしまい、
一般参加で来場した、2013年秋のゲームマーケット終了直後、中断することにしました。
(楽しみながら作るって重要です)

機会があれば、絵柄を変えて制作再開してみたいですね^^








残っているメモや画像を見ると、2013年11月末には、
放置していた推理ゲームのボードなど、一部のコンポーネントの再設計をはじめています。

『幻影探偵団』の元となった、『アイオーンの時計屋敷』の制作開始です。
 
 
 
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