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システム作りとストーリー [-制作ノート]

久々に制作ノートを書いてみましたが、続けるうちに、
これまでのことが自分の中でも整理されてきますね^^。



自分自身の制作スタイル・・・というほど、
たくさんのゲームを作ったわけではありませんが、
システム作りと平行して、かならずストーリーを組み上げています。

前作『傾国-KEIKOKU-』は、ボツ企画を春秋戦国時代の世界観に置き換えたゲームでしたが、
それぞれのキャラカードの設定や、プレイヤーとなる策士のストーリーも用意していました。

ゲーム自体に反映されないものもありますが、そういったストーリーを作ることで、
新しいアイデアが生まれたり、モチベーションが上がることも多いのです。

今回の新作『幻影探偵団』も、ゲームのシステム作りと、ストーリーの構築を、
キャッチボールするように繰り返し、できあがったゲームです。


どのような過程を経て、『幻影探偵団』が生まれたのか、
当時のメモを見てみましょう。





■本格か変格か

ミステリ作品には、おきまりのシチュエーションがいくつかありますが、
それを繰り返し遊ぶボードゲームに落とし込むにはどうしたらいいだろう。
『誰も予想しなかった空前絶後のトリック』も、
一度遊んでネタバレしたら、それで終わりですから^^。


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いわゆる『本格』と呼ばれる推理小説に使われる題材から、
当初は凝りすぎず、遊ぶたびに変化できるギミックについて検討することから初めています。

・時計塔と時間経過を盛り込む

・明かされる複雑な人間関係

・ダイイングメッセージ、遺留品による見立て

・迷路のように入り組んだ、仕掛けのある屋敷・館

その一方で、『変格』と呼ばれる、
推理よりも、猟奇幻想趣味などを優先させた作品の世界観も取り入れられたら・・・

などと、“言うは易し”なメモが残っていますね(苦笑)






■『アイオーンの時計屋敷』のストーリー

作りはじめた推理ゲーム『アイオーンの時計屋敷』には、
検討したギミックが盛り込まれていました。

さらに、明治から平成(現在)まで、
ゲームを繰り返すことで時代が移り変わり、
舞台となる屋敷が変化するアイデアまで、妄想(笑)が膨らんでいました。



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残念ながら作者の技量不足で、きちんと組み立てることはできませんでしたが、
同時期に書かれたストーリーも、のちの『幻影探偵団』に大きな影響を与えています。


[明治編]時計塔の怪人
貿易で巨万の冨を築いた豪商が、日英博覧会で知り合った錬金術士を連れて帰国。
豪商は錬金術士の設計した時計屋敷の仕掛けを使って、
美女の生き血から不老長寿の秘薬を作ろうとするが、落成式の夜に何者かに刺殺される!
屋敷に集まったものたちは、秘薬を狙う『教団』『結社』のメンバーたち。
真犯人は!?そして時計台に縛られた美女の運命は!?


[大正編]惨劇ふたたび
時計屋敷の惨劇から10数年。
屋敷を買い取った、占い師の老婆は、養女として引き取った娘を使い、
不老不死の秘薬を作ろうとするが、何者かに撲殺される。
繰り返される惨劇!世代を超え、ふたたび結集した『教団』『結社』のメンバーたち。
真犯人を割り出し、屋敷に隠された錬金術士の遺産を探し出すことができるのか?


『アイオーンの時計屋敷』では、こういったショートストーリーが、各時代ごとに作られていました。


『アイオーンの時計屋敷』が頓挫し、システムを一新した『幻影探偵団』ですが、
ストーリーや世界観はそのまま流用するかたちで再構成することになります。






■横溝か乱歩か

複雑に作り過ぎて、ゲームとして成り立たなかった『アイオーンの時計屋敷』は、
『複雑な人間関係』『遺留品による見立て』など、
横溝正史の推理小説から着想を得た部分が多かったように思います。


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当時のゲームボードはセピアで、どこか陰鬱な印象があるのは、その名残りかもしれません。

『自分の力量で、出来る範囲の推理ゲームに作り直す』

ゲームとしての規模を縮小して、再構成する際に、
もう少し痛快に推理を楽しめる世界観を加えることを検討しますが、
真っ先に浮かんだのが、江戸川乱歩です。

乱歩作品は本格推理小説が好きな方からは敬遠されがちですが、
大衆向けの長編は独特の世界観があります。
『アイオーンの時計屋敷』のストーリー再構成する際に、
乱歩作品が持つ軽快感や、当時の時代背景を取り入れることにしました。

ストーリーと設定を再構成することで、新しいアイデアが次々と出てきます!
『教団』『結社』といった組織から、探偵団への設定変更、
そして、敵となる怪人・髑髏王が生まれたのものこの時期です。


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コンポーネントのデザインは華やかに、毒々しい色調に変化していきます。
全体の色調は、乱歩作品が発表された時代よりずっとあとの
70年代〜80年代に公開された映画やTVドラマを意識しています。
蝶や薔薇、西洋人形、時計塔と分数計を繋ぐ歯車などは、
乱歩作品の書籍の装丁からイメージを膨らませています。

実は『幻影探偵団』のコンポーネントには、
乱歩作品の小道具としてよく登場する、仏像の画像がこっそり仕込まれています。
どこに隠れているでしょう?機会があれば探してみてください^^




■髑髏王と影男

ストーリー設定からの影響として、『髑髏王』の存在が大きかったです。

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猟奇殺人犯である髑髏王が、どういう思想を持つ人物で、なぜ犯行に及ぶのか、
愉快犯としての一面、そういった設定を組み立てるうちに、
招待状、分数計のギミック、アクションカードや宝石チップのアイデアなどが出てきました。
また、ゲームとしては、システムの一部である髑髏王の存在感を出すために、
団員を殺害するアイデアも、『傾国宮の殺人』から流用することで解決しています。


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反対に難産だったのが『影男』ですね。
『傾国宮の殺人』の『共犯者』から流用したアイデアでしたが、
ルールとしての仕組みが出来上がっているのに、名称・設定がしっくりこないのです。
テストプレイ当初は『迷わせる探偵』という意味から『迷探偵』としていましたが、
ストーリーにもしっくり馴染みませんでした。

乱歩の著書に同じ名前の作品があるでの、なるべくなら別の名称にしたかったのですが、
『影人』『灰色の男』など、べつのアイデアも検討した結果、
最終的に『影男』に落ち着きました。

『影男』の存在は、ゲームの難易度に大きく関係しています。
テストプレイ当初、難しすぎる、もっと能力を限定するべき、といった意見もいただいています。
自分の団員にしか変装できない、毎回変装する相手を変える、「いいえ」しか言えないなど、
いくつか能力を限定する案も検討しましたが、あまり面白味を感じられず、
現在とおなじ仕様に戻しています。





■ゲームにストーリーは必要か

テストプレイ当初、ストーリーや設定は公開しませんでした。
各探偵団のロゴも、あくまでアイコンとして機能するだけのものです。

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ところが、シートフォルダーをデザインする際に、
裏面に遊びとして設定を盛り込んだところ、意外なほど好評だったのです。

・ゲームの世界観が広がる

・番号当てをしているのではなく、ちゃんと推理しているように感じられる

・TRPGをやっているみたいで面白い

・純粋にゲームを楽しみたい人は読まなければいいだけなので、ありだと思う

推理ゲームというジャンルに限定すれば、
こういった設定の肉付けはとても重要なようです。
自分自身も推理ゲームを遊ぶなら、こういった設定は大歓迎ですから!!
(とはいえ、自分が作った設定を公開するのは、少々気恥ずかしくもありますが^^)


ありがたいことに、twitterやブログに書かれている感想を見ても、
ストーリー設定を軸に作り込んだコンポーネントは好評なようです。

『幻影探偵団』のマニュアルには、マルチエンディングが用意されています。
試作した『アイオーンの時計屋敷』のストーリとも一部リンクした内容になっています。
ゲームをする上では必要ない情報ですが、お持ちの方は読んでみてください^^。






『傾国-KEIKOKU-』のときに、書きたいことを、
かなりがっつり書いてしまったので、
今回の制作ノートは苦労しています(笑)

書きたいことはあるのですが、どこまで書けることやら^^
 
 
つづく?
 

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